介護職で心が折れる瞬間~それでも続ける理由~
介護の現場は、喜びと挑戦が共存する場所です。利用者さんの笑顔や「ありがとう」の一言に心が温まる一方で、時には心が折れそうになる瞬間もあります。
ヴェルサス福祉のブログ担当として、介護職の皆さんが日々どんな思いを抱えながら働いているのか、そのリアルな一面を伝えたいと思います。
この記事では、介護職で心が揺さぶられる瞬間と、それでもこの仕事を続ける理由を、じっくりと綴ります。介護職の皆さん、そしてこれから介護の道を目指す方々に、少しでも共感や励みになれば幸いです。
「ありがとう」が聞こえないとき
利用者さんとの小さな関わり
介護の仕事は、利用者さんとの日々の関わりで成り立っています。
朝の「おはよう」から始まり、食事の介助、着替えの手伝い、トイレのサポート、そして時にはただそばにいて話を聞くこと。
そんな一つひとつの瞬間が、利用者さんの生活を支える大切な時間です。笑顔で応えてくれる方、冗談を交わしながら過ごす時間は、介護職のやりがいそのものです。
でも、すべての瞬間がそんな風に温かいわけではありません。認知症の方や、感情を表に出すのが難しい方だと、どんなに心を込めて関わっても、反応が返ってこないことがあります。
たとえば、食事の介助でスプーンを丁寧に口に運び、「美味しいですか?」と声をかけても、視線はどこか遠くに漂い、言葉は返ってこない。
そんなとき、ふと「この頑張り、届いているのかな」と心が重くなるんです。
心のどこかで求める「認められたい」
頭ではわかっています。反応がなくても、利用者さんの生活を支えていることに変わりはない。でも、心のどこかで「ありがとう」を期待してしまう。
介護職として働く皆さんなら、きっと共感してくれるはずです。
あるスタッフがこんな話をしていました。長時間の介助の後、利用者さんが無言で席を立つ姿を見ると、「私のやってることに意味はあるのかな」と一瞬思うことがある、と。
それでも、反応がないからといって手を抜くわけにはいきません。
なぜなら、利用者さんの毎日は、私たちの小さな努力の積み重ねで成り立っているから。
たとえ言葉がなくても、その存在を支えている実感が、介護職の誇りなんだと思います。
たとえば、あるスタッフは、認知症の利用者さんがふとした瞬間に見せた穏やかな表情に、「これが私の仕事の意味だ」と感じたそうです。その一瞬が、心の重さを軽くしてくれることもあります。
見えない努力の積み重ね
介護の仕事は、目に見えない努力の連続です。利用者さんの体調を観察しながら、さりげなく声をかける。食事の量や水分摂取を記録する。
ちょっとした変化に気づいて、すぐに看護師や医師に報告する。そんな小さな行動が、利用者さんの安全や快適さに直結します。
でも、その努力が認められることは、ほとんどありません。
あるとき、夜勤で忙しく動き回っていたスタッフが、利用者さんの小さな変化に気づき、すぐに報告したことで、大きな体調悪化を防げたことがありました。
家族からは感謝の言葉をもらったけれど、普段の現場では「それが当たり前」と流されてしまう。
そんなとき、「自分の仕事、誰かが見ててくれるかな」と、ふと思うんです。
でも、介護職の皆さんは知っています。その「当たり前」の積み重ねが、利用者さんの生活を支えていることを。
身体と心の限界を感じるとき
体力勝負の現場
介護の仕事は、体力が必要です。利用者さんの移乗や入浴介助、車いすの移動。これを1日に何度も繰り返すと、腰や肩にじわじわと負担がかかります。夜勤明けには、全身が筋肉痛で動けないなんてことも珍しくありません。
特に新人スタッフだと、「こんなに動く仕事だったの?」と驚くこともあるでしょう。
ある介護職の先輩は、こんな話をしていました。「夜勤で12時間動き回った後、朝になって『これから日勤か』と思うと、心がずしんと重くなる」と。
体力的につらいとき、頭の中では「もう少し頑張れば休憩できる」と自分を励ますけど、身体が限界を訴える瞬間は、誰しもあるものです。
特に、冬の寒い日や夏の暑い日に、汗だくで介助を続けるのは、本当に大変。スタッフ同士で「この仕事、体力勝負だよね」と笑い合うこともあります。
言葉に刺される瞬間
でも、体力以上に心に堪えるのは、利用者さんからの強い言葉です。認知症の方の中には、感情のコントロールが難しい方もいて、「こんな食事、食べたくない!」とか「あなた、なんでそんな下手なの!」と言われることもあります。
頭では「これは病気からくる言葉だ」とわかっていても、心には刺さる。家に帰ってからもその言葉が頭を離れず、涙した夜もある介護職は少なくないはずです。
あるとき、いつも穏やかな利用者さんが急に怒り出し、「出て行け!」と叫ばれたことがありました。
その日は疲れも溜まっていて、思わずトイレに駆け込んで泣いてしまったスタッフがいたそうです。
「もう無理かもしれない」と感じる瞬間は、誰にでもある。
でも、そんなときこそ、深呼吸して一歩踏み出すことが大切なんですよね。
次の日、その利用者さんが何事もなかったように笑顔で話しかけてくれたとき、ホッとすると同時に、「これも介護の仕事だな」と改めて思うんです。
自分を責めてしまうとき
心が折れそうになるのは、利用者さんからの言葉だけではありません。
時には、自分自身を責めてしまう瞬間もあります。
たとえば、忙しさの中で、利用者さんの小さなサインを見逃してしまったとき。「あのとき、もっと話を聞いてあげればよかった」と後悔することがあります。
あるスタッフは、利用者さんが「ちょっと寂しいな」とポツリと言ったのを聞き流してしまい、後でその方が体調を崩してしまったことを知って、深く自分を責めたそうです。
そんなとき、頭では「完璧な介護なんてない」とわかっていても、心が追いつかない。でも、介護の仕事は、失敗や後悔も含めて、学びの連続です。
その後悔を次に活かし、もっと丁寧に利用者さんと向き合う。それが、介護職としての成長につながるんです。
仲間とのすれ違い
チームワークの大切さと難しさ
介護の現場は、チームワークが命です。一人ではできないことを、仲間と協力して利用者さんを支える。それが介護の仕事の基本です。
でも、忙しさの中で、仲間との関係がギクシャクすることもあります。シフトが重なるスタッフ同士で意見が合わなかったり、仕事の進め方で小さな衝突が起きたり。
たとえば、新人スタッフが「もっとこうしたほうがいい」と先輩に指摘されたとき、頭では「勉強のためだ」と思っても、心では「自分、向いてないのかな」と落ち込むこともあります。
忙しい現場では、ゆっくり話し合う時間がないから、すれ違いがそのまま溝になってしまうこともあるんです。
特に、夜勤や連勤が続くと、疲れから言葉がキツくなったり、誤解が生まれやすかったり。あるスタッフは、「先輩の言い方が厳しくて、辞めようかと思った」と振り返っていました。
仲間が支えてくれる瞬間
でも、介護の現場の魅力は、そんなすれ違いを乗り越える仲間との絆にあります。
あるスタッフが夜勤で疲れ果てていたとき、同僚が「ちょっと休憩してきなよ」と声をかけてくれた。その一言で、張り詰めていた心がふっと緩んだそうです。
忙しい中でも、仲間がいるからこそ、どんな大変な日も乗り越えられる。そんな瞬間が、介護職の支えになるんです。
ある施設では、シフトの後にスタッフ同士で「今日、こんなことがあったね」と話す時間を大切にしています。愚痴も笑いも共有することで、チームの絆が深まる。
介護の仕事は、一人じゃできない。でも、仲間がいれば、どんな壁も越えられるんです。
新人とベテランのギャップ
新人スタッフにとって、ベテランとのギャップも心が折れそうになる要因の一つです。
ベテランスタッフは、忙しい中でもテキパキと動き、利用者さんの小さな変化にもすぐ気づく。
その姿に憧れる一方で、「自分にはまだ遠い」と感じてしまうことも。
ある新人スタッフは、ベテランがさりげなく行う介助のスピードに圧倒され、「自分はこんな風になれるのかな」と不安になったと言います。
でも、ベテランだって最初から完璧だったわけじゃない。
みんな、失敗や葛藤を乗り越えて、今の姿があるんです。新人の皆さんに伝えたいのは、焦らなくていいということ。
少しずつ、利用者さんとの関わりの中で自分なりの介護を見つけてほしい。そうやって、仲間と共に成長していくのが、介護の現場の魅力なんです。
利用者さんとの別れ
心に残る別れ
介護職で一番心が折れる瞬間。それは、利用者さんとの別れです。
長く関わった方ほど、その存在が自分の中で大きくなっていく。毎日のように顔を合わせて、笑ったり、話したり、時には一緒に泣いたり。
そんな方が突然いなくなることは、想像以上に心に響きます。
ある施設で働いていたスタッフが、こんな話をしていました。いつも冗談を言ってくれるAさんという利用者さんがいたそうです。
Aさんは「若いんだから、もっと元気出しな!」と笑わせてくれる方で、スタッフにとっても心の支えでした。
でも、ある日、Aさんの体調が急に悪化し、病院に運ばれた。そして、そのまま亡くなったと聞いたとき、頭が真っ白になったそうです。
次の出勤日、Aさんの部屋が空っぽになっているのを見たとき、涙が止まらなかったと言います。
別れから学ぶこと
「自分がもっと何かできたんじゃないか」と自問自答したスタッフも多いでしょう。
でも、Aさんの家族から「あなたのおかげで、父は最後まで笑顔でいられたよ」と言われたとき、初めて自分の仕事の意味を感じられたそうです。
悲しみは消えないけど、誰かの人生に少しでもいい影響を与えられたなら、それは介護職としての誇り。
別れはつらいけれど、その人の人生に寄り添えたことは、きっと心に残る宝物になるんです。
あるスタッフは、利用者さんとの別れを経験した後、こう言っていました。
「別れは悲しいけど、その人が生きていた時間を一緒に過ごせたことが、私の財産だ」と。
その言葉に、介護職の深さを感じます。利用者さんとの時間は、一瞬一瞬が尊い。それを胸に刻んで、日々の仕事に向き合えるんです。
別れを乗り越えるために
別れを経験した後、すぐに次の仕事に向き合うのは簡単ではありません。
心にぽっかり穴が開いたような感覚に襲われることもあります。
そんなとき、スタッフ同士で思い出を話したり、時には黙って寄り添ったりすることが、心の癒しになります。
ある施設では、亡くなった利用者さんを偲ぶ小さな会を開くこともあるそうです。写真を見ながら、「あのとき、こんな話をしてたな」と振り返る。その時間が、スタッフの心を少しずつ癒してくれるんです。
それでも続ける理由
小さな瞬間の積み重ね
心が折れそうになる瞬間は、介護の仕事にはつきもの。
でも、なぜこの仕事を続けられるのか。それは、利用者さんとの小さな瞬間の積み重ねです。認知症のBさんが、ある日突然手を握って「いつも優しいね」と言ってくれた。疲れも不安も吹き飛ぶ、そんな一言。
利用者さんの笑顔や、安心した表情を見ると、「この仕事でよかった」と思えるんです。
たとえば、あるスタッフは、いつも無口な利用者さんが、ふとした瞬間に「あなたがいてくれると安心するよ」と言ってくれたことを、今でも心の支えにしているそうです。そんな小さな瞬間が、介護職の原動力になるんです。
仲間との絆
仲間との絆も、大きな支えです。忙しいシフトを乗り越えた後、みんなで笑いながら飲んだコーヒーの味。
どんなに大変な日でも、仲間と一緒にいれば乗り越えられる。
そんな瞬間が、介護の現場にはたくさんあります。あるスタッフは、「夜勤の後にみんなで食べるコンビニのアイスが、なんであんなに美味しいんだろう」と笑っていました。
そんな何気ない時間が、介護職の心を軽くしてくれるんです。
成長を実感する瞬間
介護の仕事は、成長を実感できる仕事でもあります。最初は利用者さんの名前を覚えるだけで精一杯だったスタッフが、半年後にはその人の好みや体調の変化に気づけるようになる。
ある新人スタッフは、最初は介助に時間がかかりすぎて落ち込んでいましたが、先輩のアドバイスを少しずつ取り入れ、利用者さんから「上手になったね」と言われたとき、初めて自信を持てたそうです。
そんな成長の瞬間が、介護職を続けるモチベーションになります。
自分の努力が、利用者さんの笑顔や安心につながる。それを実感できるから、どんなに大変でも前に進めるんです。
介護職の皆さんへ
もし、今この記事を読んでいるあなたが介護職で、心が折れそうになっているなら、ちょっとだけ立ち止まって深呼吸してみてください。
反応がなくても、感謝の言葉がなくても、あなたの存在は誰かにとって大きな意味を持っています。
介護の仕事は、簡単じゃない。でも、その先にある「誰かのために」という気持ちが、私たちを前に進ませてくれるんです。
新人スタッフの皆さんには、こう伝えたい。最初はうまくいかなくても、焦らなくていい。あなたが今、頑張っている一歩一歩が、必ず誰かの支えになっています。
ベテランの皆さんには、改めて感謝を。あなたの経験と優しさが、現場を、仲間を、利用者さんを支えているんです。
おわりに
介護の仕事は、心が折れそうになる瞬間と、心が温まる瞬間が隣り合わせです。
この記事を書きながら、介護職の皆さんの日々の努力に、改めて敬意を感じました。
もし、あなたが介護職に興味を持っているなら、ぜひ一歩踏み出してみてほしい。
そして、すでにこの仕事をしている仲間には、心から「ありがとう」と伝えたい。あなたの日々が、誰かの笑顔につながっていること、忘れないでくださいね。
ヴェルサス福祉では、介護職の皆さんが少しでも働きやすい環境を作れるよう、さまざまなサポートを用意しています。興味がある方は、ぜひ私たちのサイトを覗いてみてください。
介護の現場は、挑戦の連続だけど、笑顔と絆に溢れた場所です。一緒に、誰かの人生を支えていきましょう。
こちらの記事も参考にどうぞ。介護のミスで落ち込んだときの回復方法








